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妙にリアルな八百比丘尼の不老長寿伝説とは

◆映画「無限の住人」の主人公は不老不死の人間

 キムタク主演の映画「無限の住人」が上映中ですね(2017年4月29日公開)。GW中の人気はいかほどでしょうか。私はコミックで堪能しているので、実写化には違和感を感じてしまう派です(;^ω^) 。

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カッコよすぎるんですよねぇ。万次はもっとオッサンくさいので。
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八百比丘尼(?)と主人公の万次 『無限の住』第1巻より


 この映画の「無限の住」は、八百比丘尼のおばあさんに無限の命を授かるという主人公の物語になっています。
 
 八百比丘尼(はっぴゃくびくに、やおびくに)は、人寿800歳に達したとされる長命の比丘尼。全国を旅したという伝説が各地に残っています。
 作家の高橋克彦氏の研究によると、この伝説は、北は南奥羽から始まり、北陸、中部、山陰などを中心に100箇所以上もあるとのこと。

 夢枕獏や岡野玲子の「陰陽師」、手塚治虫の「火の鳥」など、数多くのコミックや小説でも登場する有名人でもあるのです。

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手塚治虫『火の鳥』異形編より

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岡野 玲子『陰陽師』第4巻「白拍子」より


 その大まかな内容はこんな感じです。

八百比丘尼伝説

 八百歳まで生きたという伝説上の女性。年をとっても娘のような白い肌をしていたことから白(しら)比丘尼ともよばれる。
 新潟県佐渡(さど)市南部の旧羽茂(はもち)町地域に八百比丘尼の伝説がある。

 庚申(こうしん)講に加わった男が次の講に人々を招く。台所をのぞくと人魚を料理している。
yaobikuni.jpg だれも手をつけないが、ある人が捨て忘れて家に持ち帰ったのを、その家の娘が食べてしまう。娘は年をとらないわが身をかえってはかなみ、生地を離れて諸国を巡り、八百歳で若狭の地で入定したと伝えられている。
 多少の相違はあるが、この話はほぼ全国に分布している。比丘尼の植えた杉や椿屋敷跡、洞穴など具体的な事物に結び付いて伝えられている。
 中世に熊野比丘尼が絵解きをしながら各地を巡遊したように八百比丘尼を名のる集団があって、この伝説を広めたと推測される。
 文献では、室町時代に若狭から八百比丘尼が京都に現れ、評判になったことが記されている。


出典 小学館「日本大百科全書」より

全国各地にある八百比丘尼伝説で特徴的な点を上げてみますと、

●八百比丘尼の終焉の地は若狭(福井県)の小浜で共通している。
●人魚の肉を肉を食べて不老長寿になった。
●肌が白いため白比丘尼とも呼ばれる(特に山陰地方)



◆リアルな終焉の地の言い伝え

 気になるのは終焉の地とされている若狭の小浜です。全国に伝わる民話、伝承、伝説などには、他にも「桃太郎」や「浦島太郎」など数多くあるのですが、年代が経つにつれ、原話の地名がその地方のものにすり替えられていきます。
 また、その話の内容も肉付けされたりしてルーツが分かりにくくなるのですが、この八百比丘尼伝説は、どれもが若狭の小浜で死亡した(もしくは隠れた)ことになっているのです。

 大抵の民話集は地元で完結しているものなのですが(現に岩手県の桃太郎は岩手で亡くなっている)、高橋克彦氏は、これに妙な違和感を感じているとのこと。これはひょっとして、相当な真実がそこに含まれているのではないかと語られています
(『黄昏奇譚』より)

 若狭には八百比丘尼を祀る神社や寺院が残されています。伝説となった人物が実際に存在していた可能性があるかもしれませんね。
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八百比丘尼の終焉の地とされる若狭にある神明神社と空印寺

 

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八百比丘尼入定の地(Wikipedia)


◆ただ、「生きていた」という証言だけが残る伝説

 また、人魚の肉を食べたというのも共通しています。そしてそれが不老長寿の原因となったことも。
 面白いなと思うのは、「八百比丘尼は何もしていない」ということ。ただ長生きをしているだけなのです。周囲の人々の病を治したり、奇跡を起こしたりしている訳ではありません。ただ、自分がはるか昔から生きていると言っているだけなのです。
 証明できるのは本人の口だけ。でもそれだけで神社が立ち、全国に話が広がるものでしょうか。
 八百比丘尼は、最後は若狭の小浜に長く滞在していたという伝えが残されています。現実に周囲の人間たちが、十年、二十年、三十年と娘のままでいる姿を見てきたからこそ、神社が出来き、若狭の名が全国に伝わった。そう考えて見たほうが自然かもしれませんね。
 この八百比丘尼伝説。他の民話や物語と違って妙なリアル感のある話だと思いませんか。

 また、比丘尼が日本人離れをした白い肌をしていることから、異国人説、渡来人説、はたまた宇宙人説、タイムトラベラー説、タイムリープ人説など、色々な想像や仮説が繰り広げられ、小説・ドラマなどの題材になっています。
 八百比丘尼本人が歴史を見ているだけというのは、「歴史が変わってしまうので、この世界に干渉してはならない」とするタイムトラベラーみたいな感じもしますね。


 永遠の若さ、死なない身体、不老不死、不老長寿というのは、「死」を恐れる人間にとっては、誰もの憧れでもありますが、同時に恐ろしいものでもあります。
 八百比丘尼の伝承も、愛する肉親や人々との別れを幾度も繰り返し、最後は哀しく入寂していくことになりました。

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 人間にとって「渇望するほど憧れるものけど、決して手に入れてはならないもの」それが不老不死なのかもしれませんね。
 
八百比丘尼伝説は、このような、人々の心を魅了する何かがあるのかもしれません。


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