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今も戦い続ける”赤い騎士”

空の上の超常現象.jpg M・ケイディン/野田昌宏著『空の上の超常現象』からピックアップし、その内容を要約して紹介していきます。

今も戦い続ける”赤い騎士”

 時は第二次世界大戦下のイギリス。ドイツ空軍との過酷な戦い、通称「バトル・オブ・ブリテン」は、一握りの勇敢な英空軍パイロットたちの奮闘により勝利しました。
 昼間の爆撃機の攻撃は止み、ドイツ空軍は攻撃される可能性の低い散発的な夜間攻撃に切り替えざる負えませんでした。ひとまず安堵した英空軍は、パイロットと戦闘機の補充を急ぎます。イギリス空軍もあと僅かで壊滅する危機だったのです。まさにギリギリの勝利でした。
 そんな折りにとある基地に一人の新米パイロットが補充されてきます。空戦経験が一回もないパイロットの名前はグレイスン。彼の初出撃は単機によるドーバー海峡周辺の夜間戦闘哨戒任務でした。
 昼間の編隊飛行と違い、単機なので自由に進路も変更でき、経験を重ねるにはもってこいの任務でした。

ハリケーン.jpg
バトル・オブ・ブリテンの立役者、ホーカーハリケーン戦闘機


 その夜のコンディションも良好で、明るい月明かりと、聡明な夜空。霞が発生してもすぐに風に流されていくので、眼下のドーバーの断崖が感動的な情景を作り出しています。

ドーバー海峡2.jpg


 グレイスンにとって何か異常なものを発見するだけの明かりはあったのです。前方に見えるかすかに漏れる排気炎。グレイスンの乗るハリケーンは、その排気炎のある方へとスロットルを進め近づいていきます。やがて現れる飛行機の姿。
 それは味方機でないことは確かでした。彼は離陸前に戦闘指揮所から味方機の滞空状況をすべて聞かされていたからです。
 敵との初の出会いです! 
 
一気に緊張が走るグレイスンは、気を落ち着かさせつつ、攻撃態勢に入る一連の動作を冷静に行いました。ハリケーンの8門の機銃の安全装置の解除。周囲に敵
機の僚機がいないかの安全確認(攻撃する時が逆に後方から狙われやすい)。その時です。その正体不明の飛行機は、ドイツ占領地域へと大きく転針し始めまし
た。
 海峡にいる間にケリをつけようと決心したグレイスンは、エンジンを全開にして攻撃に優位な位置を占位にかかります。

ハリケーン夜間飛行2.jpg


 しかし不思議なことに追尾するハリケーンと先方の距離がどうしても詰まりません。2機はそのまま薄い雲の上を抜け、月が明るく輝く澄んだ空に出ます。
 グレイスはそこで、相手の機体をはっきりと見ることができます。敵の機体は小ぶりですが、塗色は赤であること、そしてその胴体に描かれているのはドイツの国旗である黒十字であること。
 
 グレイスンは月光の下で相手の細部を観察しているうちに背筋が寒くなってきました。
 敵機の主翼は明らかに3枚。こんな機体をドイツが使っているなんて誰も教えてくれなかった!それも明らかに第一次世界大戦の戦闘機であるのです。
 フォッカーの三葉機。それは、グレイスンの持っている知識を総動員する限り、フォッカー Dr.Iに間違いなく、真紅の塗装は、ドイツ空軍の撃墜王、マンフレート・フォン・リヒトホーフェン男爵が乗ってい戦闘機なのです。しかし、彼は戦死しているはず・・・。

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リヒトホーフェンの愛機、フォッカーDr.Ⅰ


到底ありえないことが目の前で起きていることにグレイスンは呆然としてしまいます。さらにあり得ないことに、彼のハリケーンの速度は20年前のフォッカーの少なくても4倍以上はあります。
 だというのに彼のハリケーンは、どうしてもそのフォッカーに追いつけないでいるのです。

 突然、ハリケーンの風防に雨滴が走りました。機体は雨雲に突入します。しかしそれは数秒で終わり、再び彼は月光下に出ました。
 赤い三葉機はいなくなっていました。グレイスンは辺りを捜しましたが何も見つかりません。自分の眼がおかしくなったのか。彼は必死に説明を考えていました。今見た事実をどう報告する?

Cap 128 copy.jpg


 彼は基地に帰投します。仲間のパイロットたちに笑われる前にこちらから笑い話にしてしまおう。グレイスンはそう決め込んで仲間たちに話し始めます。

「・・・今日、自分は風防に張り付いた虫を敵機だと思ってベルリンまで追いかけそうになってしまったよ。まったくドジな話でさ・・・」

 彼は話をこうやって切り出し、詳細を語り始めました。無論、途中で仲間たちから嘲笑され、コケにされるのを覚悟のうえで・・・・。

 しかし、彼の意に反して仲間たちは静まり返っていました。そして辺りは完全な沈黙に。
グレイスンは何が何やらわからぬまま、「一体どうしたんだ?俺はそんなに異常な事をいったのかい?虫を敵機だと勘違いした馬鹿な話なんだぜ」と。
 
 「異常なことを言ったんじゃない、若いの」
ベテランパイロットの一人が語り始めます。
もう一人のパイロットが言葉を重ねます。
「また起きた訳だ。それでどうした?」
「何がまた起きただって?」グレイスンは聞き返します。
「今晩、君が出会った奴だよ」
「誰に?」グレイスンは叫びます。
「赤い騎士だよ。君が出会ったのは”そいつ”なのだ。若いの」
「赤い騎士って何者なんだ!?」
彼はその答えを用意していませんでした。
 そう、彼自身もあの機体はあの有名な撃墜王の機体であることは知っていましたが、見間違いであると答えを自分自身で出していたのです。


すぐに別のパイロットは言います。
「赤い騎士は、な」彼はゆっくりと続けます「幽霊なんだ」
「男爵の幽霊だ」別のパイロットが付け加えます。
「マンフレート・フォン・リヒトホーフェン男爵だ。第一次世界大戦のエース中のエースだったリヒトホーフェンだ。彼はイギリスの機体を80機以上も撃墜してから彼も撃墜されて死んだ。1918年の事だ。」

リヒトホーフェンとその部隊.jpg
リヒトホーフェンと仲間たち
彼らは「リヒトホーフェン・サーカス」と言われ恐れられた。


「あなたも目撃したことがあるんですか!」 仰天したグレイスンは聞きます。
「この部屋にいるほとんど全員が、彼を目撃しているんだ、若いの」
最年長のベテランが語ります。
「俺も見た。全員が一度や二度はあの三葉機にエスコートされている・・・」
 「でも・・・そんなことはあり得ないでしょう・・・」
グレイスンは弱々しく反論をします。
「あり得ない。その通りだ」
「しかし、事実なのだ」
「でも、どうしてそんな事がこの飛行隊に起こるのですか?」
グレイスンは食い下がります。
「それとも、他でも起きているのですか」
「俺の知る限り、この飛行隊だけのようだ」
「どうして?」
数人のパイロットが自分自身を指差した。
「たぶん、俺達の父親のせいだと思う・・・・。二十数年前に父たちはみんなリヒトホーフェンの部隊と戦っているんだ」一人のパイロットが微笑した。「多分、彼らの戦いはまだ終わっていないんだろう・・・・」

将校01.jpg 「おそらくその通りだと思う」と筆者は語ります。
 存在し得ない赤いフォッカー三葉機に出会ったケースは、この特定の飛行隊に属するハリケーン戦闘機だけではないのです。
 これはほんの一例にしか過ぎなく、当時のイギリス空軍の記録を調べてみると、戦闘中に第一次世界大戦で使われていたドイツ軍の布張り木製の機体が現れたという報告が幾つも見つかるとのこと。



◆白昼に現れた”赤い男爵”

 こちらは、いくつものケースの中でドイツ空軍でも公式記録に記された話。
 
メッサーシュミットBf109の編隊が低空を飛行しているハリケーン部隊の編隊に急降下攻撃をしかけた時のこと。攻撃態勢に入ったBf109編隊のまった
だ中に、真っ赤なフォッカー三葉機が突如として現れ、Bf109を引き離すような速度で急降下を開始したのです。まるで「我に続け」とばかりに・・・。
そして一気に敵の編隊の中へ突入し、そのまま消えていったとのこと。

 この不可解な出来事は、Bf109の編隊パイロットたち全員が目撃したと官姓名と署名入りの報告書を残しているとのこと。沈着冷静で勇敢なドイツ空軍パイロットたちが事実であると認めているのです。

 彼は今もヨーロッパの空を戦い続けているのでしょうか・・・。

赤い騎士の幽霊.jpg


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リヒトホーフェンがどんな人物かはこちらの記事を。
→リヒトホーフェンと騎士道精神
バトル・オブ・ブリテンに関してはこちらです。
→本日はバトル・オブ・ブリテンの日です。

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