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狼男の系譜

 『西洋の三大モンスター』といえば、一般には、“狼男”、“吸血鬼(ドラキュラ)”、“フランケン・シュタイン”という事になっているようです。次点としてミイラ男、ゾンビ、半魚人といったところでしょうか。
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 このうち、フランケンシュタイン(正確にはフランケンシュタイン博士のつくった人造人間)は完全な創作ですが、吸血鬼や狼男は中世頃からの伝承で伝わっている話なのです。
 今回は、「狼男」の話を。

◆人類の最も古い付き合いの狼という動物

 人類が狩りをするようになって狼を家畜化したものが犬といわれています。とある本では、「人類にとって犬(狼)と共存するようになったということは、現代でいうところの核エネルギーを手にしたに等しいことであった」とも。
 人間だけでは限界があった野生動物の狩りを狼(犬)と協同で狩猟を行うことによって、人類は今までよりはるかに多い食料を手にいれることができるようになりました。狼はそういう意味では、人間ととても馴染みの深い動物といえそうです。

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人間ともっとも縁の深い動物、狼


◆世界各地でみる狼と人間

 ローマの建国神話では建国の王であるロームレスとレムスの双子の兄弟は狼に育てられたという伝説があります。インドなどでも狼が人間を育てていたいう例が目撃されています。→ 狼少年(野生児)Wikipedia

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狼の乳を吸うロームレスとレムスの像

 ギリシャ神話ではゼウス神の怒りをかって狼にされたリュカ−オーンという王様の話が残っていますね(右下図)。

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 モンゴル神話では、チンギスハーンの始祖は蒼き狼と白き牝鹿と言われていますし、日本では狼=大神として神の眷属として崇拝の対象となっていました。
 また、インディアンの種族の間でも狼は人間と対等の立場で接していました。白人とインディアンとの土地の契約の時も、「この契約の場に狼がいないので、この契約は無効である」と言った説話も。

◆狼男という獣人化
 このように人間にとって特別の存在であった狼は、人間の能力を超えた動物ということもあり、憧れの対象でもありました。

 狼のように力強くなりたい・・それは人間が古くから持つ、超人化、獣人化の最も身近な対象でもありました。狼男伝説が出てきたのも何となくうなずけますね。
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 コミックでも有名な『ベルセルク』というタイトル。北欧神話に登場する異能の戦士(狂戦士)たちのことを称していますが、これも熊や狼の野獣になりきって忘我状態になって戦うことから付けられている名前です。 




◆キリスト教社会が狼を悪のイメージに変えた
 
キリスト教がローマの国教となり、北欧やヨーロッパ全体に浸透してくると、今までの神々は消え去っていくことになります。異教徒の価値観の産物である神々や精霊などは裏側へと追いやられていくわけですが、獣人化する「ベルセルク」などの現象も悪魔憑きの所業として
忌避されていきます。
 キリスト教では、狼男に獣人化するということは、神の創造に逆らう悪魔の所業として強く憎まれることになるのです。

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 さらに農耕社会が成熟してくると、狼は、畑を食い散らかし、家畜を奪うようになりました。人間にとって、狼は頭が良く罠にもかかりにくく、大事な家畜を襲う、恐怖と憎しみの対象と変容してきます。
 このように、狼男伝説は、表舞台から消え去ってはいきますが、12世紀頃に宮廷文学が盛んになってくると、恋愛叙事詩や騎士道物語などの文学作品の中にも登場してきます。
 騎士が修行をし、想像上の怪物を倒し、姫や王様に認められるというパターンができてくると、様々なモンスターが生まれてくるのです。狼男はそういう意味ではメジャーな存在ともいうものでした。
 その姿は、文明社会へのアンチテーゼとしての象徴でもありました。脱衣をし野生の皮を纏うことで、文明社会から決別し、野生に戻るという概念の象徴として狼男が定着してくるのです。

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 人間は、脱衣をすることで文明を捨て野生に戻ることができる。狼男はそんな窮屈なキリスト教社会のアンチテーゼ的象徴、脱文明のシンボルともなる存在になってきます

 14世紀から17世紀にかけて魔女裁判が吹き荒れました。狼男も魔女と同じく裁判にかけられることになります。「狼憑き」という精神病も生まれ、自ら狼男であると盲信し、実際に人間を襲う事件も多かったといわれています。
 また、作物や食料の保存方法が悪かった時代、ライ麦パンに繁殖した菌により、四肢の麻痺、思考力の低下、幻覚・興奮等の作用が起き、その結果人格が豹変したり、凶暴な行動をとってしまった人や、同じような症状が発症後に起こる狂犬病に罹患した人が狼男扱いされてしまったという説もあります。

 こういう事件も常日頃、変身願望や、狼男伝説が浸透していた証拠でもあると思います。

◆狼男にまつわる噂の真偽〜銀の弾丸で死ぬのは本当?
 狼男にまつわる話で、よく銀の銃弾に撃たれると絶命するとか、満月になると狼男に変身するとかいわれていますが、真偽のほどはどうなのでしょうか。
 まずは銀の弾丸ですが、これは実在の話ではなく、映画で作られたエピソードでした。

 1935年と1941年に、狼男を主題とした「Werewolf of London (倫敦の人狼)という映画と「The Wolf Man狼男の殺人/狼男)」という映画が上映されますが、これらの映画で、「狼男に噛まれた者も狼男になる」「銀で出来たもので殺せる」という設定が加えられ、その後の狼男の映画に決定的な影響を与えています。


 このため、この両作品の公開を区切りとして、この作品以後に登場する狼男「ウルフマン」と称し、それ以前の伝説や民間伝承における狼男を「ワーウルフ」と区別する考えも存在するそうで。映画の影響はやはり大きいですね。

 

◆狼男にまつわる噂の真偽〜満月になると変身するのは本当?

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 満月と狼男ですが、これは、満月と人間の体調に関係があるようです。満月とホルモンバランスの関係は女性の生理などからしてもあるようで、満月の夜には、精神が不安定になり、火事や事件が多いとも。
 狼男伝説の元ネタになる事件も満月の夜が多かったので、このような話が生まれた可能性が高いですね。
 また、狂犬病との関係もあるようです。狂犬病にかかると、感覚器官が超敏感になるので、昼間の行動は刺激が強すぎることに。満月の光さえ耐えられない場合は、夜に呻き苦しむ姿が、まるで狼にとりつかれたように見えるということもあるのかもしれません。
 映画で「狼男に噛みつかれた者も狼男になる」という設定も狂犬病の例から来ているのかもしれませんね。

 
◆狼男=ウルフマンとしての憧れ
  このように狼男伝説は、西洋社会では実際の歴史として数多くの話が残されており、キリスト教文明と農耕社会が作り出した悪役というイメージが定着しました。それを映画が今の狼男を決定付けたといえそうです。しかし、現代社会へのアンチテーゼ的存在として、怖いけど心のどこかで憧れてしまう存在。それが狼男=ウルフマンを今も作り続けているのかもしれませんね。

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