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【稲川怪談】会いに来た兵士

Cap 181.jpg

怪談の語り部の第一人者といえば稲川淳二さんですが、その人の怪談から興味深いお話を。

 霊は決して怖いばかりではない、優しい霊もいるという話です。



 稲川氏のところに「面白いことが書いてあるよ」と、知人が持ってきた数学のドイツ語の本。
あとがきにその筆者自身の体験談が載っている。

「何が書いてあるの?」
「この本なんだけど、あとがきに『私は数学者だから答えは一つ。それは分かりきったことなのだが、私たちの世の中には割り切れない答えもある。それを私は知った。』と書いてあるんだ。」
 「へえ。大変興味深い内容だから中身を教えてよ。」と稲川氏。

 その本のあとがきにはこういうことが書かれていた。 

 その筆者は子供の頃、ドイツの片田舎に住んでいた。
 ちょうど第二次大戦の敗戦後で、彼の家族は父親のいない厳しい暮らしをしていた。

 ドイツでも日本でいう「端午の節句」のような祝い事がある。その村では子どもたちにチョコレートのお菓子が配られる習わしだった。
 しかし敗戦のドイツなので贅沢はできない。彼のお父さんは戦死してしまったのでなおさら家庭の経済状況は厳しい。
 しかし、そんな事情もよくわかっていない幼少の自分は、お母さんにねだる。
 母親は「そんな余裕はないから」と怒られ、おばあちゃんからは「余裕ができたらおばあちゃんが作ってあげるから」となだめられる。
 しかし、一向に良くならない家庭状況で、寂しい思いを少年である筆者は感じていた。

 そんなある日の学校からの帰り道。向こうの方から背の高い兵隊さんが歩いてくる。
その兵隊は自分を見て名前を呼んで声をかけてきた。

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「おじさん、どうして僕の名前を知っているの?」

「ああ、おじさんは君のことはよく知っているよ。どうしたんだい?ずいぶん寂しそうな顔をしているじゃないか。」と聞いてくる。
「うん、僕はチョコレートのお菓子が欲しいんだけど、ママは怒って作ってくれないし、おばあちゃんは、ごめんね、今に今にと言うだけで作ってくれなんだ。自分でもわかってはいるんだけど、僕はやっぱり欲しいんだ。」

「ああ、そうなのかい。ところでお母さんやおばあちゃんは元気かい?」
「おじさんはママやおばあちゃんの事知ってるの?」
「ああ、よく知っているよ」とその兵隊さんはお母さんとおばあちゃんの名前を言った。

「じゃあ、おじさんが、君にチョコレートのお菓子をプレゼントしよう。」
「でも、ママが知らない人から物をもらってはいけないって言われているよ。」
「大丈夫。知らない人じゃないよ。おじさんは君のこともママのことも、そしておばあちゃんのことも知っているじゃないか。だから大丈夫だよ。」

と町まで連れていってもらって、そのお店で一番高いお菓子を買ってもらった。

 喜び勇んで家に帰ると、母親はそれを見つけて、
「そのお菓子はどうしたの!」と聞いてきた。
 事情を話すと、母親はまったく信じず、
「ウソをつくんじゃありません!」と怒り、頬をぶってきた。
「情けない。お菓子が欲しいあまりにこんなウソをつくなんて!死んだお父さんに申し訳がない」と泣く母親。
「ウソじゃない!」と泣きながら話すも決して聞こうとしない母親に対し、何事かとおばあちゃんが出てきて二人をなだめる。
「まあ、まあ、二人とも落ち着いて。それはどういう兵隊さんだったの?」

 少年は見た様子を細かく話す。

Cap 175のコピー.jpg その兵隊さんは階級が「中尉」であったこと。背が高く、蒼い眼で、金髪だったこと。
 おばあちゃんのことも、ママのことも、自分の名前も知っていたこと。
 僕らの事を知らない人じゃないからお菓子を買ってくれたんだということ。

 そして、最後にお菓子をもらった時に、左手の薬指にブルーの指輪をしていたこと。

 その話を聞きながら、母親は背中を向けて泣き始めた。
おばあちゃんの頬を涙が流れた。

 少年が語った特徴は、彼の父親そのものであり、そのブルーの指輪は、”英雄の指輪”で、この村でもらったのは、たった1人。それは彼の父親だけだった。

 彼は戦死した父親からお菓子を買ってもらったのだ。


 という話です稲川さん自身も好きな話の一つだそうです。
 このドイツ語で書かれた数学者の本。気になりますね。
 また、勲章となるブルーの指輪も実際にドイツ海軍などに存在しているようで。
 死んでも家族が気になって現れた父親。とっても優しい家族思いの人だったのでしょう。私もこの話が大好きです。

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