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もうひとつの穴

 管理人が小学校高学年の夏の間だけ、しかも荒川の河川敷だけで体験した不思議な話を綴っていきたいと思います。
 それは、体験した仲間たちの間で、いつしか”荒川トワイライトゾーン”と呼ぶようになり、大人になってからも「あれはなんだったのだろうか」と語るようになった不思議な話です。

 今回は、何に分類していいのか、さっぱり訳が分からない話です。

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(画像はイメージです)

④もうひとつの穴

 前回、「奇妙な死骸」の話にも触れていたが、家からスコップを持ち出していたことがある。
 それは、荒川河川敷の藪の中に”秘密基地”をつくるという、少年らしい計画のためであった。土手を下り荒川に向かっていく途中に身の丈ほどもある雑草に覆われている場所がある。そこにポッカリと小さい空き地があるのを知っていたのだ。

 四畳半もないような小さなスペースだが、まわりが雑草でそこだけ地面が露出していた。そしてその前方には、大きな荒川へと向かう水路もある。都合の良いことに土手の上からも雑草に覆われて見えない。まさに秘密基地には絶好の場所だった。
 
 誰が言い出したか分からないが、ここに穴を掘って地下の秘密基地をつくる話になった。
 縦に穴を掘って、そこから横に堀り、遊びで得た戦利品、それは硬くて何かと便利な木材であったり、棄ててあったロープであったり他愛もないものばかりなのだが、それらのものをこの穴に収納しようということになった。
 
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  地面は柔らかい。水が滲みでることもなく、交代でひたすら縦に掘り続けた。何日もかかる作業であるが新しい遊びに夢中になった。
 
 胸の高さまで掘っただろうか。。小学生にはかなりの重労働である。二人がかりで引っ張りだしてもらわないと這い上がるのが難しい深さまで掘り続けた。今度は真横に掘る作業である。掘った土はバケツに入れてまわりに捨てていく。
 他の誰かが見たら、大きな落とし穴以外の何ものでもない。しかし当の本人たちは至って真面目である。みんなの頭の中には完成図ができているのである。
 
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 しかし、何日も同じ作業をするのは、子供心に辛いものがあった。
 最初のワクワク感は消え失せ、まるで罰を受けて掘らされている強制労働のようになってきた。しかし、誰も止めようなど言える雰囲気ではない。
 何人かは、別の遊び場を探検しにいく始末である。
 そんなある日のこと、いつものように作業現場に到着し隠してあったスコップを取り出し、穴に入ろうとすると、何かが落ちている。
 犬の糞だ。
 わーっという驚きの声と、誰が下に降りて糞を回収するかで揉め、その日の作業はうやむやになった。
 
 次の日のことである。また土手に向かうとなにやら騒がしい。土手が煙だらけであるのだ。大人が何人も作業をしている。
 「雑草が焼かれている・・・」
 そう、いよいよこの荒川にも本格的な河川敷工事の手が入ることになったのだ。
 
 焼かれてしまっては、我々がつくっている秘密基地も上から丸見えになる。昨日の犬の糞の件もあり、我々のモチベーションは一気に下がった。本音はどこかでホッとしていたかもしれない。正直飽きていたのだ。

  その日も、何もすることなく引き返すことになった。その日の帰りに気がついた。
「あ、スコップがそのままだ」
 私はそのことに気が付き、次の日に仲間たちと回収しにいくことにした。

 次の日、土手の上から見ると、我々が掘り続けていた穴が丸見えである。もう秘密でもなんでもない、ただの落とし穴である。完全にテンションが下がったもののスコップだけは回収しないと父に怒られる。
 
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 我々は土手を下り、穴に向かった。穴はそのまま残されている。除いてみると犬の糞もそのままである。
 「あーあ、ここまで一生懸命掘ったのに残念だよなぁ」
 誰もがぼやいた。
 その時である。
 
 「あれ、こっちにも穴があるぞ」
 
 誰かが叫んだ。すると、自分たちが掘った穴のすぐ傍、そう、わずか4,5m先に同じような大きさの穴があるのだ。
 
 我々はそこに歩いてみた。ほんの目と鼻の先である。
 
 穴は縦に掘られ、横に掘られている・・・・・。
 穴の大きさ、深さがまったく同じである。そしてそのまわりに積み上げられた土のかたちも。
 
 要はまったくコピーされたかのような同じ穴が我々の掘った穴のすぐ傍にあったのだ。未完成のままの状態まで同じである。
 違いといえば、犬の糞があるかないかぐらいである。
  いや、もうひとつの違いといえば、土の乾き具合からみて明らかにこの穴の方が明らかに古い。我々の方が新しいのだ。
 
 誰かがイタズラで我々の真似をしたのか?と最初は思ったが、違うことになる。我々の方が後から掘ったのだ。
 すると、我々は知らずのうちに、その穴と寸分違わないような穴をすぐ傍で掘り続けていたことになる。
 
 なんでこうなった?
 一人が積んであった土の上に上り、両方の穴を眺めながら言った。
「こうやってみると、巨人が両足を荒川の方へ向けているようなかたちになったなぁ」
 長靴のような形の穴。それが両足を揃えているかたちになったのだ。
 
 気味が悪くなって、そこから離れるように帰った。スコップはまた忘れてきてしまった。
 
 
(後日談)
 この穴に関しては、まったく訳が分からない話で、なにやら通信を受けて掘らされていたんじゃないかとか、穴の形になにか意味があったんじゃないかなど色々議論をしたのですが、答えらしきものは出ませんでした。
 そこに戻ることもなんとなく嫌で、遊び場を少し離れた場所に移したのですが、そこでまた新たな怪異(”奇妙な死骸”)に遭遇するまで、スコップはその穴の傍に置いたままとなるのでした。
 
 
 
荒川での不思議な話(随時更新)

●ついてきた卒塔婆
●白い回転する布
●奇妙な死骸
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