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怪談の持つ慰霊という側面〜S君にまつわる後日談

 さて、集中的に掲載した怪談・奇譚特集も一旦終了としたいと思います。そこで最後は「怪談・奇譚」ということについて考えていることを。
 
◆怪談には、慰霊という側面もある 

 
「怪談」とは怖さや、怪しさを感じさせる物語を指します。よく「死んだ人のことを怪談にするなんて、故人に対して不謹慎である」という意見もあります。
 阪神大震災でも東北大震災でも同様の事が言われて自粛されていたこともあります。人の不幸を話のネタにするなという声も。
 私も同じ意見ですので、怖がるだけの話は不謹慎であると思います。ただ、身内や関係者の方々から直接聞く話に対しては誠意を持って聞くようにしております。
二、三年も経ってくると人の口に戸は立てられぬ」のことわざ通り、チラホラと不思議な話が囁かれてくるもんです。

 身内や親しい人の突然の死別にあの世の存在を認めたいという人も多いと思います。現に私が接してきた方々の中には、奥さまやご主人が亡くなるまでは、あの世なんか信じていなかったし、考えてもいなかったという人も多いです。

 あの世や神とかという存在は人の持つ弱さが生み出した妄想の類で、それを信じて行動に縛りをかけるのは「迷信」と一笑に付されてしまえばそれまでですが、心情的にはものすごく理解できます。

 父は無神論者で「人間は死んだら終わりである」という考えの持ち主でしたが、晩年は自分の死を恐れていた節がありました。自分が死ぬことは想像したくないのか、終活は一切やらず死後の相続の件とかで大変困りました。かたや母は存命中ですが、霊魂の存在というものを信じ、伝統的な迷信の中に生きている人でもあります。母は常に自分の死と向き合って準備をしております。どちらが穏やかな死を迎え入れられるかというと、それはやはり母的な考え方であろうなぁと思います。
 
 話が少しズレましたが、お葬式でも献杯の後などによく行われる、死んだ人の人を思い出して語るというのは故人の霊を慰めるという側面を持つと思います。
 これは日本文化に根付いていて、室町時代の「能」のなかの「平家物語」などは、合戦で不幸な人生を送った死者たちの一番心がえぐれている部分を上演し、観客がそれに対し涙し同情することで、その死者の魂を慰撫してあげて成仏させる意味があるそうなのです。平家一門の怨霊鎮めが目的なのですね(『平家物語の怪』井沢元彦著)。

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能面の演者は死者を象徴しているとされます。


 こういう話を読むと日本人は霊魂の存在を信じる信じないという次元ではなく、当然のものとして共に生活していたんだなぁと思います。そして、古くから人間の心理というものも深く理解していたんだなぁと関心せざるおえませんでした。

 怪談も四谷怪談などを始め、演芸として夏の風物詩のようになっていますが、これもまた、能に通じるものがあると思うのです。
 不安や恐怖というものは、心に強烈な印象を残します。なかなか忘れるものではありません。少し怪談的な要素も入れ、その人のことをいつまでも忘れないで語りついでいくということも立派な慰霊のひとつであると思います。
 そしてこの世だけではない何かがあるということは、慢心しがちな私たち人間社会に対し、謙虚さを教えてくれる意味もあるのかなぁと感じる次第です。

 以上、長きに渡りましたが、今年の怪談・奇譚特集を終わりたいと思います。お付き合いくださりありがとうございました。

S君にまつわる後日談


 最後に、今回の特集の締めに相応しいエピソードを。

 昨日の送り盆の日に、急遽仕事が発生しました。法事の後にトラブル処理のために仕事の資材(パソコン)預かりと打ち合わせのために家の側まで来てもらいました。その帰り道の事です。
 渋滞を避けるために、わざと裏道を選んで通ったのですが、そこでも渋滞で迂回せざるおえませんでした。いつもとはまったく違う道を走る羽目になり、見慣れない道に迷い、カーナビで最短コースを選び直して走り初めてすぐです。大きな国道のファミレスの前に出ました。
 そう、ここは、前々回のS君にまつわる話で紹介したファミレスです。(→バイク事故死したS君にまつわる話)

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 なんという偶然!あの一件以来一度も来たことはなかったのですが、何十年も心に閉まっていた内容を記事にしたその数日後に、ここを通ることになるとは。そして、この道の先には。そう、S君の事故現場です。仕事のトラブルが起きなければこの日は電車でしたのでここを通ることは絶対になかったのです。これも自分の心の片隅に残っていた思いが引き寄せたのかもしれません。なんとも不思議な気持ちになりました。

 当時、まだ十代だった頃にお別れすることになったS君。数十年の時間を超えてまた会えたような気持ちになりました。

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新装版 平家物語の怪
井沢元彦著
世界文化社

 

 

知れば恐ろしい 日本人の風習: 「夜に口笛を吹いてはならない」の本当の理由とは
(河出文庫)

 

はじめての民俗学
―怖さはどこからくるのか
(ちくま学芸文庫)

 

 

 
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